通例的な蕎麦の食べ方

年越しソバと引越し蕎麦について

蕎麦文化を語りつくしていますが、最後くらいにはもう少し馴染みのある話を持ってこようと思います。国民食として受け入れられるようになり、やがて庶民の間では蕎麦は便利な食べ物として主流な食文化の中心となって生きました。その中で蕎麦を食べることで縁起がいい、そんな風習がいつの頃からか生まれるようになりました。現代の我々も毎年一度は必ず蕎麦を食べることになる、もしくは新しい土地などで新生活を営む際に、門出を祝って蕎麦を食べる、といったことを頻繁に行っています。『年越し蕎麦』と『引越し蕎麦』、どちら片方は必ずといっていいほど日本人なら食べた経験をしている人は多いと思います。

引越し蕎麦は中々機会がないとしても、年越し蕎麦はその年の終わりに食べることで験担ぎとして次の年も縁起よく生きられるよう、といったことで食べられています。筆者も年越しは絶対と言っていいほど蕎麦を食べています。例え大晦日の日が仕事などが入ったとしても生めんではなく、インスタントの蕎麦で年越し蕎麦気分を味わうようにしています。ですがこの日、みんな考えている事は同じなのか、いつも訪れるスーパーでインスタントの蕎麦を購入しようと思ったら完売しているという、悲しいこともありましたが。

日本人にとってもはや風習というより、伝統として受け継がれている年越し蕎麦と引越し蕎麦ですが、これら二つについて考察をして見ることにします。

年越し蕎麦って

まずは年越し蕎麦から話していきましょう、一般的には年越し蕎麦と言いますがところによっては『晦日蕎麦』・『大年蕎麦』・『つごもり蕎麦』・『運蕎麦』などとも言われています。大体は年越し蕎麦なので話を進めていきますが、起源としてはやはり蕎麦が広く流通することになった江戸時代から親しみを持って食されるようになったことから、現代にまで渡り告がれています。それこそ400年近くの歴史を研鑽していることを意味していますが、どうして蕎麦はそうした縁起物として扱われるようになったのか、ご存知の方も多いと思います。

蕎麦はほかの麺類よりも切れやすいという点から『今年一年の災厄を断ち切る』と言う意味を用いて、大晦日の晩に食べることで次の年まで悪い雲気を持っていかないようにする、という願掛けが込められるようになったのです。日本人って昔からこうしたことが好きだったということなのかもしれません、ですがそうした影響もあって現在でも大晦日には年越し蕎麦を食べている人というのは、あるアンケートでは90%以上という驚異的な数値をマークしているのです。由来や起源などは知らなくても、当然のこととして受諾している人もいるかもしれませんが、それもいい意味で文化が守られていると考えて問題ないでしょう。

そんな年越し蕎麦ですが、由来については災厄を断ち切る、ということも言われていますが人によっては『細く長く生きるため』、といったように長寿などを願って食されていたとも言われています。またそれ以外にも年越し蕎麦の由来というものはいくつかあります。

  • 蕎麦は風雨に叩かれても、その後の晴天で日光を浴びて元気になることで、健康を担ぐために
  • 蕎麦が五臓の毒を取り除くと信じられていた
  • 家族の縁が長く続くようにと願いを込めて

などといった由来があると地域によっては語られています。どれが正しいのだろうか、と考えると恐らく切りがないかもしれません。どれも一概に言えない部分もあれば、一理あるといった面を出しているのでもしかしたらどれも正しいのかもしれません。

歴史的な意味で正式にはどれが本来なのか、という正解を求めなくてはいけない研究者達の意地もあるために今後も何かと議論されるかもしれませんが、この際全て正解でもいいのではと筆者は考えていますが、そうもいかないんでしょうね。

地方での年越し蕎麦の食べ方

大晦日の日に食べる、これが年越し蕎麦の基本となっていると考えている人も多いと思いますが、こちらの地方によっては食べ方が大晦日の晩ではない場合があります。

  • 福島県会津地方の場合:大晦日ではなく、元旦に蕎麦を食べる
  • 新潟県の場合:大晦日ではなく、小正月の前日である1月14日に蕎麦を食べる
  • 香川県の場合:蕎麦ではなく、地方によっては讃岐うどんを食べるところもあるが、そこまで割合としては多くない
  • 沖縄県の場合:蕎麦ではなく、沖縄蕎麦を食べる人が一般的となっている

地方によって食べ方はあり、また食べられている物が純粋な日本蕎麦ではない場合もありますが、縁起物として利用されているという点においてはある意味では共通しているといえるかもしれません。日本において蕎麦がいかに根強く浸透しているのかを理解出来ますが、地方によっては食べ方が違っているのも面白い点でしょう。

引越し蕎麦について

江戸時代、蕎麦という文化が流行り始めた時に年越し蕎麦も誕生しましたが、それと同時に生まれたのが『引越し蕎麦』です。歴史的に考えても長い風習ではあるのですが、最近では引越しの際に蕎麦を食べるという習慣は廃れつつあるという現状もあると言われています。名前と文化は知っていても、実際に引越し蕎麦を食べるというのはなかったなぁと思っている人も多いかもしれません。

そもそも引っ越し蕎麦を食べるというのは、蕎麦自体が安かったこともありますが、細く長くお世話になるという意味も込めて食べる、また隣近所に配るなどして活用されていたのです。引越しの際に活用する粗品として蕎麦が配られていたのです。また、『側(蕎麦)に引っ越してきた』という掛詞としても蕎麦を利用されるようになっていったのです。

面白いところですが、確かにこうした習慣は現代になると隣近所との関係が希薄になっていることを考えては、行わなくなっている人も少なくなるのも無理はないかもしれません。その代わりといって、現代では『引越し焼肉』というものが関東の一部地域にて定着しつつあるとも言われています。あまり聞いたこともないので何とも言えませんが、時代の変化に伴うといったところなのかもしれません。

蕎麦1つだけでここまで話が広がるというのも面白いところですが、だからこそ蕎麦を語るには事欠かないといえるのかもしれません。